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三崎亜記は、面白い!

読書
01 /15 2007
となり町戦争」の作者、三崎亜記の長編が直木賞候補になっていると聞いて,しかもその作品がきっちりSFだと聞いて、読んでみたくなりました。
洗濯済ませて近所のお気に入りのお店に出かけていって、本屋で立ち読み。「三崎亜記」って名前を忘れていたので、あれこれどれこれ、あっちこっちそっちこっち探して見つけたのは「となり町戦争の作者の最新作!」と書かれたポップ。
この作品でした。↓
バスジャック バスジャック
三崎 亜記 (2005/11/26)
集英社


ずいぶん過激なタイトルだなあ、って思ったけれど内容は「この人、女の人?」って思うようなほんわかした温かみがありました。

二回扉をつけてください
しあわせな光(3ぺーじ!)
二人の記憶
バスジャック(筒井風)
雨降る夜に
動物園
送りの夏

の7編で出来上がった短編集です。最後の送りの夏を残して読み終わりました。しっかり、ちゃっきりSFです。異世界の日常を温かな筆致で書き出した芯の通ったSFです。
最初の「二階扉をつけてください」をぱらぱらと読み始めて、なんだかよくわからない「見積書」が出てきたあたりから「おやぁ?」って思い始め、もう少し読んだところで「これは買って帰ってうちでゆっくり読もう」と決意し、直木賞候補になっている「失われた町」には手をつけずにこっちだけ買って部屋に帰ったんです。そして読み進めること137ページ。

……この人、とってもいいですよ。梨花さんと同じように意識しないままSFを読み進めてきた若手って感じ。だってさ、あんな設定をさらっと書き進めてしまうのって、一昔前の作者達なら構えるところがあると思うのだけれど、そんなことはなしに話は進んでいく。それが凄いと思った。

その昔筒井康隆が「ある日、日本以外が沈没した」って書き始めた作品があった…よね?星新一だった?(何せ昔のことでのぅ。ごほっごほっ)そんな風に「あること」は「あること」として、なんだかよくわからないけれどそのままお話は進んでいく。イガイガするような不条理じゃなくて「まあ、そんなのもアリ、かもね」って思えるあたたかさで。
それが大変心地よい。だから女性じゃないか、なんて思ってしまったんだ。お顔はこんな感じ。よければ見てください。

ここまで読んだ作品の中で一番好きなのは「動物園」主演の柚月さんのけなげさっていうか、潔さっていうのが素敵。彼女は27歳で、私よりずいぶん若いのだけれどそれでも敬愛するに十分な女性だったと、思う。そして飼育係の野崎さんのこのセリフ。

「ああ、インドゾウの『るうしぃ』なんざ、ワシと一緒に動物園に来たけども『もうゾウも飽きちまった』なんて言い出さないしなぁ」
 しごくまじめな顔で野崎さんが言うので、私は思わず噴出してしまう。
「だからワシも,『野崎のおっちゃん』に飽きるわけにゃいかねえんだよな」

素敵だと、思った。こんな風に言えるようになりたいと思った。そして、そのまま現役引退したいと思った。(無理だけど)

残りの1編。ページ数においてはほぼ半分。
次の土日にでもゆったり読んで、次の本を買うかどうか(長編に対する能力やいかに?)を確認したいと思います。とりあえずはご静観ください。

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